海から切り取る、海辺のまちの歴史巡り

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ひたちなか市の誕生30周年事業である「推しのまち巡りプロジェクト」。

今回はそこで生まれた4つのまち巡りプランのひとつ、「海から切り取る、海辺のまちの歴史巡り」と題した、那珂湊駅周辺エリアの歴史を巡るツアーです。

那珂湊は史跡が多く残るまちであり、特に江戸時代から近代にかけての歴史が見どころです。また「那珂湊おさかな市場」をお目当てに、特に週末は多くの人で賑わいます。

視点や切り口を変えてみると、今までなんとなく存在を知っていただけの史跡にもそれぞれの魅力や楽しみ方はもっとたくさんあるはずです!

そんなひたちなか市那珂湊駅周辺の歴史における「萌えポイント」やあまり知られていない自分だけの「マル秘な推しポイント」を、参加者自身がガイド役になって再発見する、みんなが主役のツアー内容をご紹介します。

「海」にまつわるエピソードから紐解くツアー

那珂湊駅周辺の小さな街にギュッと詰まったたくさんの歴史。日本各地とつながる壮大なドラマを感じることができます。住民にとっておなじみの史跡を別視点から再認識できるのも魅力です。

ところどころに海・山・空の豊かな自然、四季を楽しめるビュースポットもたくさんあります。

街と海をめぐり先人の想いを知った後に味わう海鮮の味は格別!ツアーの最後にはおさかな市場で海の幸をいただいて、賑わい豊かな現在の那珂湊も体感しましょう!

ポイント

①歴史を知り、想いを感じる(学び)

②景色を楽しむ(見る)

③海の幸をいただく(食べる)

集合:ひたちなか海浜鉄道湊線「那珂湊駅」

さあ、ひたちなか市の海辺のまちの歴史ツアー、始まりです!

大正2年(1913年)12月に開業した湊鉄道。木造駅舎やトラス構造のホーム、機関庫は今でも当時の面影を残しています。

東京スカイツリーなどにも見られる工法である、トラス構造。三角形を組み合わせて強度を出し、ホームの屋根を支えています。

さらに足元から伸びる柱には「受け」があり、屋根の部分は柱に乗っている状態です。完全には繋がっていないことにびっくり!

そのおかげで東日本大震災、更には関東大震災の時も、少しずれただけで崩れることはなかったそうです。

このような構造を111年も前に取り入れていたことには参加者も驚いていました。

地震の多い日本。経験に知恵を加え、技術に変えた昔の人はすごいですね。

湊線は、阿字ヶ浦駅から海浜公園西口付近まで3.1キロの延伸計画が進んでいます。

運用の効率化を図るため現役として国内最古参の旧国鉄型機動車「キハ205」が、ツアー当日の2024年11月24日に名残惜しくもラストランを終えました。

新しく入ってきた、と言っても別の土地を駆け抜けてきた中古車両たち。これもまたローカル鉄道にぴったりのかわいらしさ。今後はニューフェイスが ひたちなかの風をきる姿を見るのも楽しみですね!

那珂湊駅に暮らす駅ネコ「ミニさむ」に会えたらラッキー!ホームにあるミニさむの指定席をのぞいてみましょう。

那珂湊反射炉跡・山上門 見学

反射炉を目指し歩いていく途中、山上門の入り口に飲料水用の石のタンクがありました。

ひたちなか市内にはこのような湧水がいただけるところが数か所あるそうで、ここもそのうちのひとつ。

町内で管理されており、一般の方でも利用できます。蛇口をひねると勢いよく水が出てきます。これぞ天然水!さっそくいただきます。

湧水は冷たすぎず 、匂いもなく口当たりはまろやか!「水割りにちょうどいいですね」とガイドの星さん。

参加者からは「酒の肴は那珂湊の海の幸がいいね」といった声が挙がりました。

山上門 (市指定文化財)

裏路地を歩き進めると、小高い丘の上に白くそびえ立つ2基の反射炉が見えてきました。

水戸藩江戸小石川邸(東京文京区)の正面右側にあった、勅使奉迎のために設けられた門です。

のちに小石川邸の山上に移されたことが名前の由来だそう。小石川邸の建物はこの門のほかは全て失われてしまい、現存する唯一の建築物となっています。

昭和11年に那珂湊出身の「深作貞治」(華蔵院仁王門を再建した人物)が陸軍省から払い下げを受け、この地に移されました。歴史的にも貴重な価値のあるものが、遠い那珂湊の地で受け継がれていることにはロマンを感じますね。

幕末動乱期、佐久間象山・西郷隆盛・橋本左内など天下に名だたる人々はこの門をたびたびくぐっていたそう。彼らははどんな思いでこの門をくぐっていたのか。ツアーが進むにつれて、ひたちなか市の歴史への興味がわいてきました。

山上門をくぐりぬけ階段を登り切った先には、那珂湊反射炉が堂々たる姿で立ち並びます。

幕末には那珂湊沖に異国船が出没するようになり、水戸藩主・徳川斉昭は国防の必要性を認識し、鉄製大砲を鋳造するために建設しました。

安政2年(1855)に1号炉、安政4年(1857)に2号炉が完成。鉄は銅よりも溶ける温度が高いため、炉内面で火や熱を反射させ効率よく高温にする当時の最新技術だったそう。

ここで作られた大砲は江戸をはじめ各地の台場に備え付けられていたそうです。

反射炉の建設には那珂湊の大工「飛田与七」(華蔵院にお墓がある)や瓦職人の「福井仙吉」が尽力したほか、斉昭の腹心として「藤田東湖」も携わりました。

しかし東湖の息子である小四郎が元治甲子の乱(天狗党の乱)の主導者となり、よりによって父の建てた反射炉を息子が破壊するという胸の痛む結末がありました。

さらに悲しいことに、異国船に対して使うはずの大砲は、この乱で使われることになってしまったそうです。

今建っているのは昭和12年(1937)に復元されたもの。しかし、中の耐火煉瓦は残っていたため、そのまま当時のものが使われています。

華蔵院 見学

反射炉の裏道から那珂湊高校に抜け、住宅街を歩いていきます。

車で通りがかっても今まで気づくこともなかった那珂湊高校の校章は海に浮かぶ船に見えるデザインになっており、「さすが湊町」などと考えながら歩みを進めます。

華蔵院へ向けてさらに歩みを進めます。

突如眼前に現れたたくさんのお墓には、ツアー参加者も驚きを隠せません。

ここが市内最大の寺院「華蔵院」で、檀家数は2〜3千に上るそうです!ものすごい数のお墓が、高台から海の方までびっしり。

そして、その先には真っ赤な海門橋が構えます。

“お墓“の絶景!今までに見たことがありません。

私にとっては、ここがこのツアーで一番心に残った場所でした。

お盆にはすべての灯篭に灯がともるそうで 幻想的な風景が見られるそうですよ。ぜひお盆の期間に足を運びたいですね。

知らない人の墓地に入るのはかなり勇気が必要でしたが、このツアーをきっかけに「お墓の絶景」を誰かに紹介したいと思いました。

ここには反射炉建設に力を発揮した「飛田与七」の墓もあります。無数のお墓から見つけられるかな?

所狭しと並んでいるお墓の合間をふもとまで下りると、本堂、山門、薬師堂、仁王門などがあります。

薬師堂の横には、ひときわ目を引く大きな石碑があります。明治43年3月12日の暴風雪によって大遭難事故が起こり、437名もの死者・行方不明者が発生してしまいました。

その翌年、横綱の常陸山は追善相撲に訪れ、この石碑を建てたそうです。漁民の多い海辺の街と水難事故は切っても切り離せません。

「船底一枚下は地獄」という言葉が残るほど、湊町が栄える裏には胸を痛めるお話がたくさんありそうです。

そして、こちらが県の指定工芸品「華蔵院の梵鐘」です。

南北朝時代の暦応2年(1339)に製造され、江戸時代以前に作られたものとしては茨城県内でも数少ないのだそうです。

さらにこの鐘、すごいのはこれだけではないんです!

もとは現在の常陸大宮にある浄因寺にあり、のちに満福寺に移されました。天保の頃、水戸藩主、徳川斉昭による大砲鋳造のため徴収されて那珂湊に運ばれました。

ですが青銅製から鉄製の大砲づくり(那珂湊反射炉での鋳造)に代わったということと、当時としてもこの鐘が貴重なものであると知っていた理解ある者たちにより鋳つぶされず守られたという奇跡があったのです。

人々の善意が運よく働いて奇跡的に残った感動ドラマがあったのですね。その後 鐘は 明治時代に華蔵院の所有となりました。

色鮮やかにたたずむ「仁王門」は元治甲子の乱(天狗党の乱)でも唯一消失を免れましたが、明治35年暴風で倒壊してしまいました。昭和32年、深作貞治夫妻の寄進で再建されました。

今回のツアーは紅葉真っ盛りで秋を楽しめました。春には梅が咲き誇り、夏には灯籠に火が灯る。四季折々の風景を楽しめる華蔵院です。

湊公園

華蔵院から竹林を抜け、湊公園へ向かいます。

街の所々にある行先案内板は、看板に書いてあるスポットの特徴がイラストで表されており、上手い具合に文字へと仕立て上げられています。

デザインされた方の発想力に感心しました。皆さんも足を止めて、写真タイムです。

湊公園は那珂湊の景色が一望できるビュースポットです。

そんな高台にある湊公園ですが ここは、元禄11年(1698)に徳川光圀(水戸黄門)の別邸「い賓閣(いひんかく)」が建てられた場所です。

歴代藩主の接待、別荘の役割のほか、船を監視する見張り番が設置された海防の拠点だったそうです。

芝生の広場には井戸の跡がありました。ガイドの星さんは「まだ掘れば水が出てくるんですよ。そしてなぜこの井戸が貴重かというと、当時のい賓閣の図面に井戸が描かれているんです。という事は、ここから建物の位置や方向が大体推測できるんです。それだけ貴重なものが発見されたんです!」と話します。

なるほど、井戸一つでこんなにも歴史を紐解いていけるんですね。

い賓閣は300坪(約1000㎡)で部屋数は30ほどあり、2階部分も有する豪華なものだったそうです。

しかし、こちらも元治甲子の乱(1864)で焼失。166年の歴史に幕を閉じました。

最初は水戸藩だけの内部抗争だったものが次第に事が大きくなり、幕府軍をも巻き込み、ここ那珂湊が主戦場になってしまった歴史を学びました。

街もろとも、い賓閣や反射炉もなくなってしまった当時の争乱。「なんで水戸藩はこんなに翻弄されたのだろう。」と、ガイドの星さんは話します。

そのような戦乱を生き抜いた樹齢350年の見事なクロマツ。

兵庫県の須磨明石から光圀が取り寄せ植えたもので、12株が現存しており、市指定天然記念物になっています。

一段高くなっている日和山からは筑波山と並んで富士山も見ることができます。

お正月に初日の出を見に来るのもいいですね。

お魚市場 見学

ここまでたくさん歩いて、皆さんお腹ペコペコです。湊町の歴史を学んだところで、ツアーの締めは新鮮なお魚を食べましょう!!

おさかな市場は関東を代表する観光市場として、那珂湊漁港の向かい側にたくさんのお店が軒を連ねています。

毎年およそ100万人が訪れているそうで、この日も県内外から集まったたくさんの観光客による活気に満ち溢れていました。

お店には、目の前の太平洋で水揚げされた新鮮な魚介が並んでいます。

お客さんたちの手には、持ちきれないほどの新鮮な魚がたくさん!行く人行く人みんな笑顔です。

食べ歩きも楽しみのひとつですね。

生ガキやミニタコが丸ごと1匹入ったたこ焼きもありました。

お食事処もたくさんあってどこに入ろうか迷ってしまいました。私が選んだのはおさしみと“めひかり”のからあげ定食。

おなかもいっぱい、初めて知った歴史もいっぱい。心動かされる情景もいっぱい。

五感が満たされたツアーでした!

参加者の声

参加者からは、次のような感想をいただくことができました。

「このツアーに参加したことで、訪れたことがなかったり、普段は通り過ぎていたものがたくさんある事に気がつきました」

「普段通らない道、車で通り過ぎてしまう道をゆっくり歩く事で小さな発見がいっぱい詰まったまち巡りでした」

「歴史は教科書で勉強してきたくらいであまり深く知らなかったけど、実際見たり詳しいお話を聞き、「へぇ〜、そうなんだ!」と新しい発見がありました。質問に答えてくれる人(ガイド)がいるのは世界が広がっていいですね」

「今回は半日で巡るツアーでしたが、さらにゆっくり巡るのもいいかな?と思いました」

「自分でなんとなくまわっても何の知識にもならなかったと思います。ガイドさんがいて詳しいお話をしてくれたり、質問にすぐ答えてくれるのはツアーのメリットですね!」

「最後におさかな市場でお腹を満たすのはとても満足のいくツアーの締めにふさわしいチョイスでした」

皆さんもぜひ海沿いの歴史を体感して、自分にとっての「推しポイント」を発見してください!

<ツアー投票は2025年1月19日(日)まで!>

「推しのまち巡りプロジェクト」は、ひたちなか市の誕生30周年記念事業です。

ひたちなか市民がまちの魅力を再発見し、任意で参加したまちを好きなメンバーが推しポイントや、あまり知られていない自分たちだけのマル秘ポイントを別視点から再発見し、市民が考える新たな魅力を伝える4つの「推しのまち巡り」プランを作りました。

みなさまの投票を経て、新たなまちの魅力を伝える「まち巡りマップ」として発表します。

(ライター:ひたちなか市 いいとこ発信隊 ゆっぷん)

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